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2006年5月の記事

2006年5月22日 (月)

のあさんのミニストーリー第一弾♪

のあさんのミニストーリーを前々から見させていただいておりました。

とてもいいストーリーがいっぱいなので、のあさんにお願いをしたところ、

OKを頂いたので、ここで紹介させていただきます。

これからも、のあさんのお時間があり次第、紹介させていただこうか

と思っています。


『やさしいキスをして』

こういうのをストーカーというのだろうなぁ。彼女の後をつけながら僕は思った。

同じクラスの彼女は静かにしていればおとなしめに見えるが、割と活発で、

笑顔が可愛い女の子である。高一の時、陸上部でグラウンドで走っているのを

見かけた時から、彼女から目が離せなくなっていた。

高二になって同じクラスになった時には僕の胸は高鳴った。

だけど一向に話す事が出来なかった。

それに彼女は何となく僕を避けている気がした。何故だろう...。

別に気に障る事をした訳でもないし、第一、話をした事がないんだから。

でも本心を訊ける訳でもなく、今日一人校門を出る宮崎を見つけて思い切って

訊いてみようと思った。でも、やっぱり訊けなくてそのまま後をつけるはめに

なってしまった...。

学校の側の裏通りを歩き、もうすぐ大通りに出る。大通りに出れば10分も歩けば

彼女の家に着いてしまう。でも、気が焦るばかりで今一歩の踏ん切りがつかない...。

「フギャ」前ばかりを見ていて足下に気付かなかった。何かに蹴躓いたようだ。

下を見ると猫がいた。白黒ブチでノラ猫のようだ。どうも人馴れしているらしく、

僕の足下にすり寄ってくる。「何にも食い物なんてないぞ。」

動物好きの僕は、猫の喉を撫でてやろうとしゃがんで手を伸ばした時だ。

キィーと甲高いブレーキ音。続けてドンと鈍い音。事故?立ち上がって音が

した方を見た時、その車は走り去ってしまっていた。「オイオイ、轢逃げか?」

人だかりの方に走っていくと、彼女が茫然として立っていた。見つめるその先には

人はいなかった。かわりに小さなミケ猫が一匹、横たわっていた。一生懸命

立とうとして足を動かしているが、弱々しい。思わず駆け寄って抱き上げる。

まだ間に合うかも知れない。でも、動物病院はどこだ?

「近くの動物病院を知らないか?」彼女に訊いてみる。返事がない。

「あおい!動物病院は?!」

「車で10分位のところに...。」ようやく彼女が口を開く。

「ご免、案内して。」タクシーを停め、慌てて乗り込む。

「△△動物病院へ行ってください。道順教えますから。」彼女が運転手に言う。

「お客さ~ん、困りますね~。汚さないで下さいよ。」運転手がルームミラー越しに

文句を言ってくる。猫の血がシートに付くのを嫌がっての事だ。

「いいから、急いで下さい!汚れたらシートのクリーニング代弁償しますから!」

思わず怒鳴ってしまう。

「これでくるんであげて。」彼女がスポーツバッグからタオルを出して僕に渡す。

「でも...。」「いいから、使って。

クリーニング代って結構高いよ。」そう言ってウィンクする。ちょっとドキッとして

しまった。

動物病院に着いた。料金をとりあえず宮崎に立て替えてもらいタクシーを降りる。

動物病院の自動ドアを抜けると看護士が近づいて来た。「車に轢かれたんです!

お願いします!」

「お待ち下さい。」そう言い残し奥の扉に引っ込む。暫くすると先生らしき人が

出てきて、あれこれ状況を訊いてくる。一通り説明すると先生は猫を引き取り、

手術室に入っていった。

「とりあえず、座ろう。」立ったまま手術室の方を見つめていた僕に彼女が声を

かける。「助かるだろうか?」

「大丈夫。」彼女のそのたった一言の声音があまりにも優しく、僕の胸の奥を

つつくので危うく自分の想いが出そうになった。でも今は言うべき状況じゃない。

とっさの誤摩化しで最近まで飼っていた雄犬の事を話した。僕が生まれて5ヶ月目に

我家に来た事、生年月日が一緒な事、常に兄弟みたいに暮らして来た事、

だんだん足腰が弱って来た事、老衰で...

「最後の時、もう目も鼻も利かなくなっているのに、立ち上がることも出来ないのに

一生懸命僕を捜すんだ...。抱きかかえてあげると、僕の顔の方に目を向けて...。

本当は見えてないのかも知れないけど、僕は見つめられている気がした。

ありがとうって...言っている気がした...。」

バタンとドアが開いて、先生が出てくる。立ち上がって先生を見る。

先生の満足げに頷く顔が全てを物語っていた。

さっきまで待合室に漂っていた緊迫感が安堵感に変わる。

「ふぅ~」大きく息をつき同時に座る二人。

「はい」彼女の声と同時に手元にハンカチが置かれた。その時になってやっと

自分の手に血だらけなのに気づいた。

手を拭いていると、僕の膝の上に彼女が静かに手を置いた。

えっ、と思い彼女の方に顔を向けようとしたとき甘い香りが鼻をくすぐった。

頬に柔らかいものが触れる。

時が止まった...。

                         3d@zxe

http://www.dctgarden.com/dct-tv/inde x.html

↑ドリカム PV『やさしいキスをして』はここを見てね~♪ch1-6(緑の6番)

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