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2011年8月の記事

2011年8月24日 (水)

夏休みの宿題は済んだかな?

『彼女の誕生日』
 volume 9 偶然

 

「・・・浅野?」

「・・・こんにちは。」

雰囲気が違っていて、一瞬わからなかった。

いつもはロングのストレートの髪を

編み込んでいたし

見慣れた制服と違い、水色のワンピースが

似合っていた。

「・・・何でここにいるの?」

「あ~、ここへ来る途中で偶然会っちゃって。同じ目的だし、お昼ご馳走してあげるからウチにおいでって誘ったの。

で、ちょっと喋っていたら遅れちゃった(笑)」

「ちょっとじゃないんだけど・・・」

「ごめん、ごめん。」

「ところでみんな知り合いなの?」

「うん。手芸クラブの後輩だもの。」

「ふ〜ん。そう言えば美由紀姉、昔からそういうの得意だったしな。」

「まぁね。で、この子が遠藤京子。」

美由紀姉がもう一人の子を紹介した。

「7組で恵子の友達の遠藤京子です。クラス離れているから、長野君は私の事知らないよね。」

「うん、ごめん。」

「でも、私はよく知ってるよ。」

と言って、チラッと浅野を見た。

 

「さぁ、行こうか。おなかもすいたし。」

美由紀姉に促されて皆歩き出す。

「あっ、そうそう手芸クラブと言えば、美由紀姉に去年もらったマスコット。」

「あ~、テニスラケット型のね。」

「そうそう。今もちゃんとラケットケースに付けてあるよ。」

「大事にしてくれてるんだ。」

「うん、まあね。」

「よかったね。」

「よかった、ね?」

「んっ?よかったなと言ったんだよ。」

 

そうこうしている内に家に着く。

「いらっしゃい。」

引戸を開けたガラッという音に気づいた

伯母さんが玄関に出て来た。

「カズ、久しぶりだねぇ。しばらく会わないうちにいい男になって。モテるでしょ?」

「何言ってんの、伯母さん。この身長じゃモテるわけないって。」

実際、僕は165センチでクラスの男子では一番低い。

《そんなことないよ、ねぇ~》 《はい》

「へっ?美由紀姉、何か言った?」

「モテる、モテないの前に鈍感を直さないとねぇ。」

「誰が鈍感なんだよ?」

「君!」

「人を指差すんじゃない!」

「人差し指って言うんだからいいじゃない!」

「ほらほら、玄関で喋ってないで上がりなさい。」

 

 

続く...

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2011年8月12日 (金)

残暑お見舞い申し上げます

『彼女の誕生日』
 volume 8 待ち合わせ

 

「行ってきます。」

5月3日の朝は若干曇っていた。

「持ちづれ~。」

着替えだけならまだしも、結構な量のお土産も

持たされたので荷物が多い。

駅まで歩くのも一苦労だ。

メモに書かれた時間通りの電車に乗る。

目的地までは30分程の距離。

電車の中は連休からか家族連れが多かったが、

なんとか横並びの席に座れた。

やがて心地よい揺れが睡魔を誘う。

 

ガタンと大きな揺れで目を覚ました。

慌てて、かつ、さり気なく窓の外を見たが、

降りる駅はもう少し先だった。

顔を戻す時、左横に赤ちゃんを抱いた

若い母親に気づいた。

赤ちゃんがじっと僕の方を見ている。

ペロっと舌を出してやったら

声を出して笑った。

〈そんなに可笑しいのか?〉

ウケた様なので、しばらくにらめっこの後

また舌を出す。

そうこうしている内に降りる駅に着いた。

にらめっこは勝ち逃げで電車を降りた。

〈ホームの後ろの階段を昇って、右手の改札を出る、と〉

柱の横に公衆電話があった。

〈ここで待て、か〉

柱の前にもたれ、改札を眺める。

同じ様に藤を見に来たらしい人達が

ぞろぞろと改札を出て、同じ方向に歩いていく。

〈初めて来たけど、結構人出が多いんだな〉

 

「あれっ?」

腕時計で時間を確認する。

〈待ち合わせ時間過ぎてるよな。〉

10分過ぎてた。

〈お~い、早く来~い〉

15分・・・、遅い!

 

電話をかけようと柱から背を離したときだった。

「ゴメン、カズ待った?」の美由紀姉の声。

「遅い!・・・えっ?」

声の方に振り向くと、美由紀姉の横に女の子が

二人立っていた。

一人は知らない子、もう一人は

「・・・浅野?」

 

 

続く...

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2011年8月 5日 (金)

夏バテしてませんか?

『彼女の誕生日』
 volume 7 初恋?

 

「5月3日予定無いんでしょ?」

「うん...。」

「暇なんでしょ?」

「うん...。」

「だったらデートしよ?」

小首を傾げながら見つめてくる。

「・・・。」

そこそこのレベルで可愛いだけに

見つめられると困る。

困る理由はそれだけじゃないけど・・・。

 

中一の時、気になる女の子が出来た。

部活が同じで体育館の隣のコートで

僕と同じ様に声を張り上げながら

頑張っている姿が印象的で

やがて目が離せなくなった。

だが、やがてその恋も片想いで終わる。

僕より背の高いであろう男子と並んで

帰るのをよく見かけるようになった。

そんな二人の後ろ姿を見て感じた切ない思いは

あの日、引越トラックを見送った時の

言いようの無い寂しさに似ていた。

 

「マジ?」

ようやく出た言葉は、ひっくり返って酷く間抜けだった。

「うっそ~ん。」

「はぁ?」

「びっくりした?」

「びっくりしたっつーの!」

〈そう言えば彼氏がいるって言ってたっけ。なに動揺してんだろ。〉

「えっ?何か言った?」

「・・・、いや何でもない。」

「相変わらず、からかうと面白~い。」

その辺は昔と変わらず、質の悪い美由紀姉だった。

「でっ(怒)?」

「で?」

「それだけですか?(怒)」

「怒んないでよ。」

「純真な少年をいじめるからですけど。」

「ごめんなさい。」

素直に頭を下げる美由紀姉。

「本題はこっちなんだけど・・・、話・・・、聞いてくれる?」

「どうぞ。」

「実は母さんから言われているの。」

「伯母さんから?」

「カズ、アンタ中一以来母さんに会ってないでしょ。」

「うん。」

「藤祭りやってるし、ご馳走してあげるから泊まりで来なさいって。」

「う~ん。」

「アンタ、母さんに気に入られていたもんね。」

そう言えば、伯母さんにはよく世話になった。

でも、ご馳走というフレーズを出してくるのは

まだまだ子供扱いか・・・。

「ねっ?人助けだと思って。」

「人助け?」

「あっ・・・。え~っと。カ、カズを連れて来ないと私が怒られるんだから。」

「ふ~ん?。わかった、行くよ。伯母さんに言っといて。」

「よかった。じゃ、これ詳細ね。電車の時間とか書いてあるから。」

折ったメモを渡してくる。

「じゃ、当日待ってるから。」

と、言い残し走っていった。

 

「小学生か!」

メモを開いて見てみると、そこには電車の時間と

待ち合わせ場所の他に持ち物という欄があった・・・。

 

 

続く...

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