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2011年11月20日 (日)

浴衣の君は・・・

『彼女の誕生日』
 volume 17 あの頃のまま

 

二人並んで露店を前を歩く。

焼きトウモロコシの醤油の匂いにつられていく。

たこ焼きを美味しそうに頬張る。

しかし、よく食べるもんだ。

「だって美味しいんだもの。」

ペロッと舌を出す。

 

ニ週間前、いつも通り一緒に帰る時

「あのさ、再来週の土曜日祭りがあるんだけど、一緒に行かない?」

祭りの話を切り出した。

「再来週の土曜日?」

「うん、そう。」

嬉しそうな顔をして手帳を見ていたが

すぐ寂しそうな顔をした。

「ごめんね。その日は行けない。」

「えっ?だめ?」

「うん。家の用事で・・・、ごめんね。」

僕の問い掛けにすごく残念そうな顔をして答えた。

 

昼休みに体育館の連絡通路でぼぅっとしてたら

膝カックンをされた。

さては、また水谷かと思いきや美由紀姉だった。

「どうしたの?ぼぅっとして。」

僕は浅野とのやりとりを説明した。

「そっか。しょうがないよね。」

「まあね。そう言えば引越してからしばらく祭りに行ってないんじゃないの?」

「そうだなぁ、平日ばっかりだったし。」

「今年は土曜日だし、誰かさんと行ってくれば?」

「・・・。」

「美由紀姉?」

「えっ?ああ、そうか、そうだね。」

何だろ?この反応。ケンカでもしているのかな。

それでも、数日後

「祭りの日、カズん家に泊まりにいくから、叔母さんによろしく言っといて。」

と言ってきたから大丈夫なんだろう。

まぁ野暮なことは聞かないってことで。

 

二階の僕の部屋の窓から花火が見える。

今年も一人で花火見物かぁと思いながら

外を見ていると、玄関先で聞き慣れた声がした。

「ごめんくださ~い。」

下に降りて玄関の戸を開けると美由紀姉が立っていた。

「いらっしゃい。あれっ?浴衣じゃないんだ。」

「だって電車に乗っている間にシワになっちゃうもの。」

「でも母さんまだ帰ってないぜ。」

「大丈夫。自分一人で着られるから。」

 

「見て見て!新しい浴衣買ったんだ。」

浴衣に着替えた美由紀姉は袖を摘んでクルッと回ってみせた。

「へぇ~、似合うじゃん。」

「えへっ良かった。じゃ、行こうか。」

「えっ?」

「早く支度して!祭りに行くよ!」

「俺も一緒に?やだよ、お邪魔虫は。」

「違う、違う!カズと私、二人で行くの。」

「へっ?」

彼氏も浅野と一緒で都合が悪かったらしい。

 

「さぁ勝負するよ。」

「走ると危ないって!」

神社の本殿でお参りをして露店を一通り見た後

出口付近で金魚すくいを見つけて美由紀姉は走り出した。

「あっ!」

躓いて転びそうになった美由紀姉の手を取って支える。

「ほら、言わんこっちゃない。」

美由紀姉が足首を押さえてうずくまった。

「足どうかした?」

「ちょっと挫いたかも。」

 

「しょうがない。勝負は止めにして帰って湿布貼ろ。」

「うん。ごめん。」

肩を貸しながら歩く。

「通りに出たらおぶってやるから。」

「えっ~!恥ずかしいよ~。」

「だって家まで片足引きずって歩くつもり?20分はかかるぜ。」

「・・・、お願いします。」

美由紀姉の下駄を右手に持ちおんぶする。

「ねぇ、重くない?」

「重いですね~。」

「そういう時は重くないよって言うの!」

頭を小突いてくる。

 

「ねぇ、小さい時にもさ、こうやってカズにおぶってもらったことあったよね。」

「え~と、・・・ああ、あのときも美由紀姉転んで挫いていたっけ。」

「そうそう、でもあまりに危なっかしいんで、ちょうど通りかかった近所の人が

見かねて代わってくれたんだよね。」

「そりゃ、あの時は美由紀姉より小さかったしさ。」

「今じゃ私より背が高いし、力も強くなって・・・、男の子だよね~。」

「あのさぁ、何か馬鹿にしてない?」

「してないよ~、・・・。」

〈でも、ずっとあの頃のままでいられたらいいのに・・・。〉

「んっ?何か言った?」

返事の代わりにスッーと寝息が聞こえてきた。

「美由紀姉?もしかして寝ちゃった?」

はしゃいではいたけど疲れていたんだろうか・・・。

良かった。寝ちゃうくらいだから、足はそんなに酷くはないんだろう。

よく寝てるようだけど、花火が上がる前には起こさなくっちゃな。

じゃないと何言われるかわかんないし。

 

 

続く...

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