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2011年12月24日 (土)

恵子のクリスマスイヴ

『彼女の誕生日』
 volume 19 クリスマスイヴなのに・・・

 

一年生の時から好きだった彼に告白。

付き合うようになってから七ヶ月。

今年のクリスマスイヴは二人で・・・なんて

期待していたのに・・・。

それなら、私ん家に泊まりに来る?と京子が言った。

 

「誰も居ないね~。」

帰り道、京子がテニスコートを横目で見ながら言った。

「今日部活休みだもん。」

「イヴは駄目でも、クリスマスは?」

「明日もだって・・・。」

イヴに間に合う様に一生懸命編んだマフラーもいつ渡そうか・・・。

京子が肩をポンポンと叩く。

「今日は二人で朝まで騒ぐかぁ、ね!」

「でも明日も学校だよ。」

「せっかく寂しい恵子の為に盛り上げてやってるのに~。まぁ私もだけど・・・。」

「あっ、ごめん、ごめん。ありがとね。」

 

「あれっ?どこ行くの?」

通学路から外れ、横道に入って行く。

「へへっ、いい喫茶店見つけたんだ。」

通学路沿いに喫茶店が二軒、駄菓子屋が一軒ある。

駄菓子屋なんかはウチの男子の溜り場になっているし、

私も喫茶店に長野君と入ったこともある。

でも、こっちの方は滅多に歩く事もないから

喫茶店があるなんて気付かなかった。

木のドアを開けると、カランカランとウェルカムベルの音。

イブと言う事もあり、店内にはツリーがある。

カウンター席とテーブル席が五つで、木の温もりを感じる店内の造り。

「あっ、この曲聴いた事ある。」

店内に流れているジャズは、ジャズ好きな父さんの影響で

幼いころから子守唄のように耳にしていたし

絶妙なボリュームで心地よく感じる。

店の一番奥のテーブル席に座って二人ともホットを頼む。

 

「ねっ!いい感じの店でしょ。恵子なら気に入ると思ったけど。」

気に入ったよ。だから「長野君と来たかったなぁ。」なんて

思わず声にしてしまう。

「私で悪かったね。」

「いや、そういう意味じゃなくてね・・・。」

「じゃ、どう言う意味よ?」

「もう~。分かっているくせに~。」

「はいはい。ごちそうさま。」

でも何だろう?クリスマスイヴに用事って。

「違う子と会ってたりして。」

「・・・。」

「あっ、ごめん、ごめん。笑えないよね。」

そう、笑えない冗談だ。

私は結構ヤキモチ焼きなんだと、彼と付き合いだして気付いた。

付き合う様になって一緒にいればいるほど

傍に感じれば感じるほど、それは強くなった気がする。

「アイツはお人好しでおまけに情に流されやすいから、ちゃんと捕まえてないと何処かに行ってしまうぞ。」

修学旅行で水谷君に言われた言葉。

帰りに私から初めて手を繋いだのも、そのせいかも知れない。

でも、やっぱりきっかけは私のヤキモチからだ。

だって、あの時・・・。

 

「もしかしたらバイトなんかで忙しいのかも?イヴだし。」

そんなモヤモヤした気分の私に追い討ちをかける京子。

「えっ?バイトって?なんでイヴになの?」

「何でって、ほら。」

京子が私の後ろを指差す。

「え~、何で?」

振り向いた私の後ろに立っていたのは、

エプロンをして私達の頼んだホットを持った長野君だった。

「さて邪魔者は先に帰ろうかなっと。」

カバンを持って立ち上がった京子。

「じゃ、また後で報告してね。ちゃんと帰ってくるんだよ。」

私の横を抜ける時ボソっと耳打ちした言葉に赤面する私。

 

「驚いた?実は・・・。」

まだびっくり顔をしている私に説明を始める彼。

マスターが部活の先輩の知り合いで、アルバイトは夏休みに入ってから。

それから平日部活の無い日と土曜日にアルバイトしていたとの事。

「言ってくれればいいのに〜。」

返事の代わりに「ちょっと待って」と言って

カウンターの向こうへ入って行く。

「ほら、ミートスパゲッティ。好きだろ?」

戻ってきた彼がテーブルの上に載せる。

そしてもう一つ私の好きなオレンジジュースが。

「ねぇ、これってもしかして・・・?」

「そう。俺が作ったの。ミートソースも手作り。」

「美味しい。」

彼は今日はもう上がりだからとエプロンを外しながら

今日の為にバイトのことは内緒にしておいたと

言って照れ笑いした。

 

ホワイトクリスマスにはならなかったけど、外は風が冷たい。

でも繋いだ私の右手は暖かった。

そして彼がくれたシルバークロスネックレスと

マフラーを巻いてあげた時の彼の照れ臭そうな笑顔が

私の心も暖かくしてくれている。

時刻表を見ると、次のバスは5分後だった。

もうちょっと一緒にいたいなぁ。

「ねぇ、あの店気に入っちゃった。また行ってもいい?」

「いいよ。そう言えば美由紀姉も気に入ったって言ってたっけ。」

「えっ?近野先輩もあの店知っているの?」

「うん。この間来た時にさぁ、〜〜」

 

ああ、まただ。

楽しそうに話す彼を見る度に私の心は曇る。

私達の仲を取り持ってくれた人だし

従姉だっていうのも分かっている。

でも、彼の口からその名前が出ると胸が痛くなる。

ねぇ、何でそんなに楽しそうに話すの?

私の事を誰かに話す時にもそんな顔をしてくれてるの?

気付いたら私はマフラーを掴んで彼と唇を重ねていた。

そのまま何も言わずに、ちょうど来たバスに

逃げる様に乗り込んだ。

 

 

続く...

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