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2012年2月14日 (火)

バレンタイン

『彼女の誕生日』
 volume 21 予感

 

登校・下校時の学校はざわめいている。

そんなのは当たり前なんだけど、今日はいつもと違うざわめきの朝だった。

バレンタイン・デー、男子も女子も期待と不安で一杯の日。

登校中に大小様々な紙袋を持った女子を見かける。

あちこちで渡している場面もあった。

肝心の僕はと言えば、初詣の時の浅野の言通り期待はしていた。

教室に入ると浅野はもう来ていた。

僕を見ると、いつになくはにかんだ笑顔でおはようと言った。

僕もおはようと返す。

予鈴が鳴って席につく時、すれちがいざまに

「帰りにね。」と浅野が言った。

 

「部活頑張ってね。」

浅野に見送られて部室に向かう。

部室でもチョコの話題で持ち切りだった。

もう貰っている輩もいて見せびらかす奴や後輩のチョコを奪おうとする先輩もいた。

そんな連中を横目で見ながら、僕は部活が終わるのを待っていた。

 

「あれっ?美由紀姉じゃん。どうしたの?」

着替えをも終わり部室を出て体育館のところで美由紀姉に出会した。

「どうしたの?は御挨拶なんだけど。せっかく手作りしたんだけどなぁ。」

あっ、そうだ、去年も手作りチョコくれたんだっけ。

だけど手作りと言っても試作品(失敗作とも言う)で出来映えの良い物は当然彼氏用。

でもあえて手作りをくれるのだから、男としては嬉しかった。

でも今年は浅野がいるから、くれるとは思ってなかった。

「はい、どうぞ。」

「ありがとう。」

チョコをバッグに入れて浅野が待ってる図書室に向かおうとする

僕の前に美由紀姉が立ち塞がる。

「何?」

「・・・じゃないよ。」

「えっ?何て言った?」

「それ、義理じゃないよ」

叫ぶように言いながら抱きついて来た。

「美由紀姉?」

「・・・。」

胸に顔を埋めて何か言ったが聞こえなかった。

「好き。」

もう一度言った言葉はハッキリと聞こえた。

顔を離し眼を瞑る美由紀姉。

そのまま何も言わない。

「美由紀姉?」

「あのさ美由紀姉、もうその手には引っ掛からないんだけど。」

「ちぇ、やっぱりばれたか~。」

二度も引っ掛かってたまるか。

眼を開けて美由紀姉が笑い出す。

「あっ、でもそれ今年も一応手作りだから心して食べるように。」

呆れ返る僕を尻目にそう言い残して帰る美由紀姉。

って、見送ってる場合じゃない、浅野を迎えに行かなくちゃ。

 

図書室に入るといつもの窓に近い席に浅野はいなかった。

トイレかなと思いつつその場所に立ってみる。

ああ、確かにここからならテニスコートが見えるな。

「あれっ?なんであそこにいるんだ?」

コートを囲うフェンスの所に浅野が立っていた。

慌てて下に降りていく。

「どうした?こんなところで?図書室で待ってるんじゃなかった?」

僕の掛けた言葉に振り向いた浅野の眼にドキッとした。

 

 

続く...

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コメント

今年もわたしはチョコを貰えそうにありません・・・。weep

まあ、せめて美由紀姉の想いが伝わることを願っております・・・。bleah

投稿: はーちゃん | 2012年2月14日 (火) 11時29分

はーちゃん

昔のはーちゃんは過去に帰ったみたいね( ̄ー ̄)

投稿: のあ | 2012年2月27日 (月) 01時09分

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