« もう2月 | トップページ | バレンタイン »

2012年2月13日 (月)

寒っ!

『彼女の誕生日』
 volume 20 安堵 

 

「・・・。」

浅野がバスに乗って行った後、僕は暫くボーとしていた。

当然初めてのことだし、ましてや浅野の方からいきなり・・・。

結局その夜はよく眠れなかった。

目が赤いまま、学校へ行く。

今日が終業式なのが幸いだった。

まぁ、講堂で立ったまま居眠りなんてことも無いだろうから。

 

当たり前の事だけど、学校へ近づくにつれて

ウチの学校の生徒が増えていく。

同じ様な長い髪の子を見る度、口元に眼が行ってしまう。

浅野もどんな気持ちで来ているのだろう、

そんな事ばかり考えていた。

 

「あっ。」

下駄箱のところで遠藤と一緒にいた浅野に出会した。

「お、お早う。」「お、お早う。」

浅野も目が赤かい、と言うか遠藤も目が赤い。

それに遠藤の僕を見る眼が何か恨めし気だ。

まるで寝不足は僕のせいだと言わんばかりに。

「ぷっ。」

その眼が何となく可笑しくて吹き出してしまった。

浅野も気付いていたのか釣られて笑い出す。

それまでのぎこちない空気が急に和んだ。

遠藤と別れて教室へ二人並んで行く。

和やかな雰囲気のままで初詣の約束を取り付ける。

正確に言えば元日には二人とも家族で行くので

“初”ではないんだけど、三日は空いていると言うので

三日に初詣の約束をした。

 

元日に届いた年賀状の中に浅野の浅野の名前を見つけた。

女の子との年賀状のやり取りは初めてなので

何て書いてあるのか気になる。

『A HAPPY NEW YEAR 昨年は大変お世話しました』

早速裏を見て、ちょっと笑ってしまった。

「三日の初詣は私の家の近くの神社に行きたいんだけど・・・、いい?」

初詣に誘った時、浅野がそんな事を聞いてきた。

浅野がどんなところに住んでいるのかも見てみたいし

特に断る理由もないので二つ返事でOKした。

バスを降りた時、バス停まで浅野が迎えに来ていた。

浅野は5月に会った時と同じ様に髪を編み込んでいた。

「・・・。」

こんな時、何て言えば良いのだろう?

何か照れ臭さが先に来て上手い言葉が見つからない。

晴着があまりに似合っていたから・・・。

「これだとバスのステップでつまづいたりしそうだから来てもらっちゃた。」

「・・・。」

「ねぇ?何か言ってよ。」

ちょっと膨れっ面も可愛く見えて困る。

「・・・、あっ、ごめん、ごめん。見とれてた。」

ようやく出た僕の言葉に、へへっと笑ってクルッと回った。

そう言えば、美由紀姉も祭りの時浴衣で同じ様なことしたなぁと

思い出した・・・が、口にはしなかった。

イブの時、僕がよく眠れなかったのは高揚と驚きだけじゃない。

いきなりのキスの前に見せた浅野のすごく哀しそうな眼・・・。

それがすごく気になっていたからだ。

あの時も僕が美由紀姉の話をしていた時だった。

ヤキモチ?いや、それだけじゃないよな?

何だろう、上手く言い表せないのがもどかしい。

終業式の日、浅野は普通に笑ってくれた。

僕はすごくホッとしたし嬉しかった。

これからは浅野の前では美由紀姉の話題を出さない方がいいのかも知れない。

 

「来月、期待していてね。」

別れ際、浅野は楽しそうに、そして悪戯っぽく笑って手を振った。

 

 

続く...

|

« もう2月 | トップページ | バレンタイン »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/121724/44106635

この記事へのトラックバック一覧です: 寒っ!:

« もう2月 | トップページ | バレンタイン »