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2012年3月の記事

2012年3月24日 (土)

今年もつらい花粉症

『彼女の誕生日』
 volume 24 不安

 

目に溜まっていた涙が零れ落ちる。

「付いて来ないで!」

その泣き顔と声に気圧されて僕は動けなかった。

振り返って歩き出したかと思うとすぐに走り出して

左手を顔に当てて体育館の角を曲がって行く。

こんな時僕はどうすればいいんだろう・・・。

情けないことに僕はその場に暫く立ち尽していた。

 

そうだっ!美由紀姉は?

我に返った僕は美由紀姉を捜しに走った。

美由紀姉が僕を好きだって?

そんなこと、そんなことは・・・。

やっぱり浅野は誤解してるんだ。

ちゃんと話してもらわないと。

校門を出たところで見渡してみたが姿が見えない。

もうバスに乗ってしまったのだろうか?

 

大通りに出た所で反対車線のバス停を見る。

「いたっ!」

数人の列の中に美由紀姉がいた。

「美由紀姉!」

美由紀姉は僕に気付くと列を離れて走り出した。

えっ?何で逃げるんだ?

近くの信号は赤、車線を横切って追おうかと思ったが

車線が広く車も多いので流石に無理だ。

「早く信号変われよ!」

信号が変わると同時に美由紀姉を追う。

大通りから角を曲がって路地に入って行く。

いったいどこまで走って行くんだ?

「美由紀姉、待てってば!」

四つ角で美由紀姉が一瞬ほんの少しだけ後ろを見て

また走り出した時だった。

 

美由紀姉の体が宙に舞った。

それはまるでスローモーションを見ているようだった。

映像だけが見えていて音が遮断された世界がそこにあった。

ゆっくりと美由紀姉の体が横向きに地面に落ちた時

全てが現実に戻った。

「美由紀姉!美由紀姉!」

出会い頭にバイクに跳ねられた美由紀姉はそのまま動かなかった・・・。

救急車に同乗した僕は搬送された病院から美由紀姉の家と

僕の家に事故の事を電話で話した。

程なく病院に来た皆に事情を説明した。

あの時僕が追わなければと頭を抱え嘆く僕の肩にそっと手を置き

「大丈夫。きっと大丈夫だから。」

と伯父は言ってくれた。

でも・・・

廊下のソファに座りまんじりともせず朝を迎えたが

美由紀姉の意識は戻らなかった。

 

まさか、このままなんて事はないよな。

“ちぇ、やっぱりばれたか~。”

“あっ、でもそれ今年も一応手作りだから心して食べるように。”

あれが最後なんて事ないよな。

病院のトイレの鏡に写った自分の顔に美由紀姉の笑顔を重ねる。

実はさっき吐いてしまっていた。

恐らく寝てないのと極度の緊張のせいからだろう。

何も食べてないぶん胃液しか出なかったのでかなり苦しい。

ふらつきながら戻ろうとした時だった。

「長野君!」

公衆電話の横の所で遠藤に会った・・・。


 


 


続く...

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2012年3月11日 (日)

あれから一年・・・

『彼女の誕生日』
 volume 23 想い

 

「危ないでしょ、ボーと歩いていちゃ!そもそも何で一人で歩いていたの?長野君と一緒じゃなかったの?」

事故の翌朝、目を覚ました恵子に車に跳ねられたケガ人ということも忘れ

畳み掛けるように質問をぶつけた私。

「今日って何曜日?学校あるんじゃないの?」

「土曜日!自主休校!」

そんな私を見て少し笑った恵子だったけど

その笑顔は泣きそうなくらい寂しく見えた。

そして事のいきさつを話しだした時に恵子の頬に流れた一筋の涙。

恐らく、私はそれを一生忘れないだろうと思った。

 

ひととおり事のいきさつを話した恵子が私を見つめる。

「やっぱり驚かないんだね・・・。」

いや、驚いているよ。

もしかしたらと思っていた私の感が当たっていた事を・・・。

「だけど、何で今頃になって?・・・。」

「いや、それって今だからじゃないの?」

私の言葉に少し驚いた様に目を見開いた恵子。

「先輩の気持ちわかるもの。」

恵子の咎める様な視線を感じながら私は話を進めた。

中学生の思い出話を・・・。

 

私には幼馴染みがいた。

家が近所で幼稚園から中学校まで一緒だった

その幼馴染みの名は紀藤博と言った。

「京子って紀藤君と付き合っているの?」

中ニになってすぐの時に友達の川村真由美に聞かれた。

「ううん、ただの幼馴染みだよ。」

そう答えた私に、ぱぁっと華が咲いたような笑顔見せた真由美を見て

私は彼女が博を好きなんだと気付いた。

夏休みを迎える頃には二人が一緒に帰るのをよく見かけるようになった。

博の笑顔は昔から見ててよく知っている。

でも真由美と話す時の博の笑顔は、私に向けられていたそれとは違うものだった。

やがてそれを見る度に切ない思いが溢れるようになった。

その思いが博に対する恋心から来るものだと気付いた時には遅かった。

二人の間に私が入り込む隙間などもうどこにも無かった。

 

「私の場合は結局何も言えなかったけどね・・・。」

「京子はいつ頃から知っていたの?近野先輩の気持ち・・・。」

私はこれ以上話すべきかと少し迷いはしたが

やっぱり話しておくべきなんだろうと思い、また話し始めた。

夏休み前、先輩が彼氏と思われる人と歩いているのを見かけたこと。

夏休みにバッタリと二人と出くわして紹介をされたこと。

その時昼食を三人一緒に食べたこと。

「その時に感じたんだ。先輩の想いの先にいる人を・・・。」

恵子が目を伏せた。

やり切れないかも知れないけれど、これも現実なんだよ。

人の想いは簡単に止められないものだもん。

長野君に告白した恵子だってそうでしょ?

そうだ、そう言えば肝心の長野君は?

昨日救急車に乗せられる恵子を見送った後

付近を捜してみたけど長野君は見当たらなかった。

昨夜から家に電話しているんだけど誰も出ない。

近野先輩の家も誰も出なかった。

「ちょっとごめんね。」

また電話をかけようと病室を出た私が公衆電話のところで見たのは・・・。

 

 

続く...

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