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2012年3月11日 (日)

あれから一年・・・

『彼女の誕生日』
 volume 23 想い

 

「危ないでしょ、ボーと歩いていちゃ!そもそも何で一人で歩いていたの?長野君と一緒じゃなかったの?」

事故の翌朝、目を覚ました恵子に車に跳ねられたケガ人ということも忘れ

畳み掛けるように質問をぶつけた私。

「今日って何曜日?学校あるんじゃないの?」

「土曜日!自主休校!」

そんな私を見て少し笑った恵子だったけど

その笑顔は泣きそうなくらい寂しく見えた。

そして事のいきさつを話しだした時に恵子の頬に流れた一筋の涙。

恐らく、私はそれを一生忘れないだろうと思った。

 

ひととおり事のいきさつを話した恵子が私を見つめる。

「やっぱり驚かないんだね・・・。」

いや、驚いているよ。

もしかしたらと思っていた私の感が当たっていた事を・・・。

「だけど、何で今頃になって?・・・。」

「いや、それって今だからじゃないの?」

私の言葉に少し驚いた様に目を見開いた恵子。

「先輩の気持ちわかるもの。」

恵子の咎める様な視線を感じながら私は話を進めた。

中学生の思い出話を・・・。

 

私には幼馴染みがいた。

家が近所で幼稚園から中学校まで一緒だった

その幼馴染みの名は紀藤博と言った。

「京子って紀藤君と付き合っているの?」

中ニになってすぐの時に友達の川村真由美に聞かれた。

「ううん、ただの幼馴染みだよ。」

そう答えた私に、ぱぁっと華が咲いたような笑顔見せた真由美を見て

私は彼女が博を好きなんだと気付いた。

夏休みを迎える頃には二人が一緒に帰るのをよく見かけるようになった。

博の笑顔は昔から見ててよく知っている。

でも真由美と話す時の博の笑顔は、私に向けられていたそれとは違うものだった。

やがてそれを見る度に切ない思いが溢れるようになった。

その思いが博に対する恋心から来るものだと気付いた時には遅かった。

二人の間に私が入り込む隙間などもうどこにも無かった。

 

「私の場合は結局何も言えなかったけどね・・・。」

「京子はいつ頃から知っていたの?近野先輩の気持ち・・・。」

私はこれ以上話すべきかと少し迷いはしたが

やっぱり話しておくべきなんだろうと思い、また話し始めた。

夏休み前、先輩が彼氏と思われる人と歩いているのを見かけたこと。

夏休みにバッタリと二人と出くわして紹介をされたこと。

その時昼食を三人一緒に食べたこと。

「その時に感じたんだ。先輩の想いの先にいる人を・・・。」

恵子が目を伏せた。

やり切れないかも知れないけれど、これも現実なんだよ。

人の想いは簡単に止められないものだもん。

長野君に告白した恵子だってそうでしょ?

そうだ、そう言えば肝心の長野君は?

昨日救急車に乗せられる恵子を見送った後

付近を捜してみたけど長野君は見当たらなかった。

昨夜から家に電話しているんだけど誰も出ない。

近野先輩の家も誰も出なかった。

「ちょっとごめんね。」

また電話をかけようと病室を出た私が公衆電話のところで見たのは・・・。

 

 

続く...

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