彼女の誕生日

2012年3月24日 (土)

今年もつらい花粉症

『彼女の誕生日』
 volume 24 不安

 

目に溜まっていた涙が零れ落ちる。

「付いて来ないで!」

その泣き顔と声に気圧されて僕は動けなかった。

振り返って歩き出したかと思うとすぐに走り出して

左手を顔に当てて体育館の角を曲がって行く。

こんな時僕はどうすればいいんだろう・・・。

情けないことに僕はその場に暫く立ち尽していた。

 

そうだっ!美由紀姉は?

我に返った僕は美由紀姉を捜しに走った。

美由紀姉が僕を好きだって?

そんなこと、そんなことは・・・。

やっぱり浅野は誤解してるんだ。

ちゃんと話してもらわないと。

校門を出たところで見渡してみたが姿が見えない。

もうバスに乗ってしまったのだろうか?

 

大通りに出た所で反対車線のバス停を見る。

「いたっ!」

数人の列の中に美由紀姉がいた。

「美由紀姉!」

美由紀姉は僕に気付くと列を離れて走り出した。

えっ?何で逃げるんだ?

近くの信号は赤、車線を横切って追おうかと思ったが

車線が広く車も多いので流石に無理だ。

「早く信号変われよ!」

信号が変わると同時に美由紀姉を追う。

大通りから角を曲がって路地に入って行く。

いったいどこまで走って行くんだ?

「美由紀姉、待てってば!」

四つ角で美由紀姉が一瞬ほんの少しだけ後ろを見て

また走り出した時だった。

 

美由紀姉の体が宙に舞った。

それはまるでスローモーションを見ているようだった。

映像だけが見えていて音が遮断された世界がそこにあった。

ゆっくりと美由紀姉の体が横向きに地面に落ちた時

全てが現実に戻った。

「美由紀姉!美由紀姉!」

出会い頭にバイクに跳ねられた美由紀姉はそのまま動かなかった・・・。

救急車に同乗した僕は搬送された病院から美由紀姉の家と

僕の家に事故の事を電話で話した。

程なく病院に来た皆に事情を説明した。

あの時僕が追わなければと頭を抱え嘆く僕の肩にそっと手を置き

「大丈夫。きっと大丈夫だから。」

と伯父は言ってくれた。

でも・・・

廊下のソファに座りまんじりともせず朝を迎えたが

美由紀姉の意識は戻らなかった。

 

まさか、このままなんて事はないよな。

“ちぇ、やっぱりばれたか~。”

“あっ、でもそれ今年も一応手作りだから心して食べるように。”

あれが最後なんて事ないよな。

病院のトイレの鏡に写った自分の顔に美由紀姉の笑顔を重ねる。

実はさっき吐いてしまっていた。

恐らく寝てないのと極度の緊張のせいからだろう。

何も食べてないぶん胃液しか出なかったのでかなり苦しい。

ふらつきながら戻ろうとした時だった。

「長野君!」

公衆電話の横の所で遠藤に会った・・・。


 


 


続く...

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2012年3月11日 (日)

あれから一年・・・

『彼女の誕生日』
 volume 23 想い

 

「危ないでしょ、ボーと歩いていちゃ!そもそも何で一人で歩いていたの?長野君と一緒じゃなかったの?」

事故の翌朝、目を覚ました恵子に車に跳ねられたケガ人ということも忘れ

畳み掛けるように質問をぶつけた私。

「今日って何曜日?学校あるんじゃないの?」

「土曜日!自主休校!」

そんな私を見て少し笑った恵子だったけど

その笑顔は泣きそうなくらい寂しく見えた。

そして事のいきさつを話しだした時に恵子の頬に流れた一筋の涙。

恐らく、私はそれを一生忘れないだろうと思った。

 

ひととおり事のいきさつを話した恵子が私を見つめる。

「やっぱり驚かないんだね・・・。」

いや、驚いているよ。

もしかしたらと思っていた私の感が当たっていた事を・・・。

「だけど、何で今頃になって?・・・。」

「いや、それって今だからじゃないの?」

私の言葉に少し驚いた様に目を見開いた恵子。

「先輩の気持ちわかるもの。」

恵子の咎める様な視線を感じながら私は話を進めた。

中学生の思い出話を・・・。

 

私には幼馴染みがいた。

家が近所で幼稚園から中学校まで一緒だった

その幼馴染みの名は紀藤博と言った。

「京子って紀藤君と付き合っているの?」

中ニになってすぐの時に友達の川村真由美に聞かれた。

「ううん、ただの幼馴染みだよ。」

そう答えた私に、ぱぁっと華が咲いたような笑顔見せた真由美を見て

私は彼女が博を好きなんだと気付いた。

夏休みを迎える頃には二人が一緒に帰るのをよく見かけるようになった。

博の笑顔は昔から見ててよく知っている。

でも真由美と話す時の博の笑顔は、私に向けられていたそれとは違うものだった。

やがてそれを見る度に切ない思いが溢れるようになった。

その思いが博に対する恋心から来るものだと気付いた時には遅かった。

二人の間に私が入り込む隙間などもうどこにも無かった。

 

「私の場合は結局何も言えなかったけどね・・・。」

「京子はいつ頃から知っていたの?近野先輩の気持ち・・・。」

私はこれ以上話すべきかと少し迷いはしたが

やっぱり話しておくべきなんだろうと思い、また話し始めた。

夏休み前、先輩が彼氏と思われる人と歩いているのを見かけたこと。

夏休みにバッタリと二人と出くわして紹介をされたこと。

その時昼食を三人一緒に食べたこと。

「その時に感じたんだ。先輩の想いの先にいる人を・・・。」

恵子が目を伏せた。

やり切れないかも知れないけれど、これも現実なんだよ。

人の想いは簡単に止められないものだもん。

長野君に告白した恵子だってそうでしょ?

そうだ、そう言えば肝心の長野君は?

昨日救急車に乗せられる恵子を見送った後

付近を捜してみたけど長野君は見当たらなかった。

昨夜から家に電話しているんだけど誰も出ない。

近野先輩の家も誰も出なかった。

「ちょっとごめんね。」

また電話をかけようと病室を出た私が公衆電話のところで見たのは・・・。

 

 

続く...

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2012年2月27日 (月)

鈍感

『彼女の誕生日』
 volume 22 何故?

 

私は何を言っているんだろう。

 

湯煎して溶かしたチョコをアルミのカップに流す。

大きめにしようかとも迷ったけど、やはり食べやすい小分けにした。

bitterとsweetを半々にする。

固まる前にアーモンドや小さなハートチョコをトッピングする。

「出来たぁ~。」

初めての手作りチョコは我ながらいい出来映えだと思う。

 

朝、箱に入れラッピングしてあったチョコをカバンに大事にしまう。

ドキドキを鎮めるため、玄関を出た所で一つ深呼吸する。

こんなにもドキドキする理由。

想いを告げた時から付き合い始めて九ヶ月、

私はまだ彼から私への想いを聞いてない。

だから今日はチョコを渡す時、改めて想いを告げる。

そして、彼の私への想いを確かめたい。

私と同じ気持ちでいてくれるなら、“好きだ”の一言が聞けたなら

すごく嬉しいんだけど・・・。

 

今朝は、いつもより早く学校へ来てしまった。

彼はまだ来ていなかった。

朝に渡すのだろうか、紙袋を持った子達が廊下を走って行く。

私は放課後に渡そうかな。

カバンの中のチョコを見て、視線を廊下に戻したら

ちょうど教室に入って来た長野君と目が合った。

なんか照れ臭くって、おはようが上手く言えなかった気がした。

帰りに渡す約束をして、放課後いつもの様に図書室で彼を待つ。

一冊読み終わって本棚に返しに行くとき壁の時計が目に入った。

「あっ、もうこんな時間だ。」

もう部活の終わる時間だった。

テニスコートが見える窓の外を見てみた。

 

いたたまれなくなって図書室を飛び出した。

図書室から見えるテニスコート。

誰も居ないテニスコートを金網越しに見入る様に立っていた人・・・。

不安な気持ちで心臓が早鐘を打つ。

体育館の角を曲がって横を抜ければテニス部の部室だ。

「嘘・・・。」

体育館の横で見た光景に足が竦む・・・。

 

気が付いたらテニスコート脇に立っていた。

さっき図書室から見た場所・・・。

「どうした?こんなところで?図書室で待ってるんじゃなかった?」

彼の声に振り返った私はどんな顔をしていたのだろう?

「ど、どうかした?」

彼のうわずった声と驚きの表情。

そりゃ、そうだろう。

あんなところを見て平気でいられる訳がない。

現に立っているのがやっとだった・・・。

「も、もしかして、さっきの見てた?」

「・・・。」

私の表情から察してか、彼の問掛けに無言で頷く私。

「美由紀姉の悪い癖だってば。すぐからかうからさ。好きだなんて悪い冗談だよな。」

「・・・思ってる?」

「えっ?」

「本当に冗談だと思ってる?」

「えっ、だって冗談って言ったし、彼氏だっているし・・・。」

「二人でいるところを見かけた事あるの?会った事あるの?」

「そ、それは・・・、ないけど。」

「それに居たって関係ないもん!好きだったら関係ないもん!」

「・・・好きって、何で言いきるのさ。」

「分かるよ!同じ想いを持った女の子だから!」

 

私は何を言っているんだろう。

彼が近野先輩の想いを冗談と思ったなら

近野先輩が彼への想いを冗談と言ったなら

そのままなら、単なる私のヤキモチで済む事なのに・・・。

そうだ、私は確かめたかったんだ。

彼の想いを、私が一番好きなんだって。

それなのに・・・。

ねぇ何でそんな困った顔をするの?

何で何も言ってくれないの?

 

「・・・もういい。」

「えっ?」

「もういいよ!」

「浅野?」

“浅野?”彼の言葉に私の中で何かが弾けた。

「・・・なんだから。」

「えっ?」

「何もかも鈍感なんだから!」

彼に背を向けて歩き出す。

「浅野っ?」

「付いて来ないで!」

こんな泣き顔を見られたくない。

 

その後どこをどう歩いたか覚えていない。

でも、気が付いたら私は病院のベッドの上にいた。


 


 


続く...

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2012年2月14日 (火)

バレンタイン

『彼女の誕生日』
 volume 21 予感

 

登校・下校時の学校はざわめいている。

そんなのは当たり前なんだけど、今日はいつもと違うざわめきの朝だった。

バレンタイン・デー、男子も女子も期待と不安で一杯の日。

登校中に大小様々な紙袋を持った女子を見かける。

あちこちで渡している場面もあった。

肝心の僕はと言えば、初詣の時の浅野の言通り期待はしていた。

教室に入ると浅野はもう来ていた。

僕を見ると、いつになくはにかんだ笑顔でおはようと言った。

僕もおはようと返す。

予鈴が鳴って席につく時、すれちがいざまに

「帰りにね。」と浅野が言った。

 

「部活頑張ってね。」

浅野に見送られて部室に向かう。

部室でもチョコの話題で持ち切りだった。

もう貰っている輩もいて見せびらかす奴や後輩のチョコを奪おうとする先輩もいた。

そんな連中を横目で見ながら、僕は部活が終わるのを待っていた。

 

「あれっ?美由紀姉じゃん。どうしたの?」

着替えをも終わり部室を出て体育館のところで美由紀姉に出会した。

「どうしたの?は御挨拶なんだけど。せっかく手作りしたんだけどなぁ。」

あっ、そうだ、去年も手作りチョコくれたんだっけ。

だけど手作りと言っても試作品(失敗作とも言う)で出来映えの良い物は当然彼氏用。

でもあえて手作りをくれるのだから、男としては嬉しかった。

でも今年は浅野がいるから、くれるとは思ってなかった。

「はい、どうぞ。」

「ありがとう。」

チョコをバッグに入れて浅野が待ってる図書室に向かおうとする

僕の前に美由紀姉が立ち塞がる。

「何?」

「・・・じゃないよ。」

「えっ?何て言った?」

「それ、義理じゃないよ」

叫ぶように言いながら抱きついて来た。

「美由紀姉?」

「・・・。」

胸に顔を埋めて何か言ったが聞こえなかった。

「好き。」

もう一度言った言葉はハッキリと聞こえた。

顔を離し眼を瞑る美由紀姉。

そのまま何も言わない。

「美由紀姉?」

「あのさ美由紀姉、もうその手には引っ掛からないんだけど。」

「ちぇ、やっぱりばれたか~。」

二度も引っ掛かってたまるか。

眼を開けて美由紀姉が笑い出す。

「あっ、でもそれ今年も一応手作りだから心して食べるように。」

呆れ返る僕を尻目にそう言い残して帰る美由紀姉。

って、見送ってる場合じゃない、浅野を迎えに行かなくちゃ。

 

図書室に入るといつもの窓に近い席に浅野はいなかった。

トイレかなと思いつつその場所に立ってみる。

ああ、確かにここからならテニスコートが見えるな。

「あれっ?なんであそこにいるんだ?」

コートを囲うフェンスの所に浅野が立っていた。

慌てて下に降りていく。

「どうした?こんなところで?図書室で待ってるんじゃなかった?」

僕の掛けた言葉に振り向いた浅野の眼にドキッとした。

 

 

続く...

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2012年2月13日 (月)

寒っ!

『彼女の誕生日』
 volume 20 安堵 

 

「・・・。」

浅野がバスに乗って行った後、僕は暫くボーとしていた。

当然初めてのことだし、ましてや浅野の方からいきなり・・・。

結局その夜はよく眠れなかった。

目が赤いまま、学校へ行く。

今日が終業式なのが幸いだった。

まぁ、講堂で立ったまま居眠りなんてことも無いだろうから。

 

当たり前の事だけど、学校へ近づくにつれて

ウチの学校の生徒が増えていく。

同じ様な長い髪の子を見る度、口元に眼が行ってしまう。

浅野もどんな気持ちで来ているのだろう、

そんな事ばかり考えていた。

 

「あっ。」

下駄箱のところで遠藤と一緒にいた浅野に出会した。

「お、お早う。」「お、お早う。」

浅野も目が赤かい、と言うか遠藤も目が赤い。

それに遠藤の僕を見る眼が何か恨めし気だ。

まるで寝不足は僕のせいだと言わんばかりに。

「ぷっ。」

その眼が何となく可笑しくて吹き出してしまった。

浅野も気付いていたのか釣られて笑い出す。

それまでのぎこちない空気が急に和んだ。

遠藤と別れて教室へ二人並んで行く。

和やかな雰囲気のままで初詣の約束を取り付ける。

正確に言えば元日には二人とも家族で行くので

“初”ではないんだけど、三日は空いていると言うので

三日に初詣の約束をした。

 

元日に届いた年賀状の中に浅野の浅野の名前を見つけた。

女の子との年賀状のやり取りは初めてなので

何て書いてあるのか気になる。

『A HAPPY NEW YEAR 昨年は大変お世話しました』

早速裏を見て、ちょっと笑ってしまった。

「三日の初詣は私の家の近くの神社に行きたいんだけど・・・、いい?」

初詣に誘った時、浅野がそんな事を聞いてきた。

浅野がどんなところに住んでいるのかも見てみたいし

特に断る理由もないので二つ返事でOKした。

バスを降りた時、バス停まで浅野が迎えに来ていた。

浅野は5月に会った時と同じ様に髪を編み込んでいた。

「・・・。」

こんな時、何て言えば良いのだろう?

何か照れ臭さが先に来て上手い言葉が見つからない。

晴着があまりに似合っていたから・・・。

「これだとバスのステップでつまづいたりしそうだから来てもらっちゃた。」

「・・・。」

「ねぇ?何か言ってよ。」

ちょっと膨れっ面も可愛く見えて困る。

「・・・、あっ、ごめん、ごめん。見とれてた。」

ようやく出た僕の言葉に、へへっと笑ってクルッと回った。

そう言えば、美由紀姉も祭りの時浴衣で同じ様なことしたなぁと

思い出した・・・が、口にはしなかった。

イブの時、僕がよく眠れなかったのは高揚と驚きだけじゃない。

いきなりのキスの前に見せた浅野のすごく哀しそうな眼・・・。

それがすごく気になっていたからだ。

あの時も僕が美由紀姉の話をしていた時だった。

ヤキモチ?いや、それだけじゃないよな?

何だろう、上手く言い表せないのがもどかしい。

終業式の日、浅野は普通に笑ってくれた。

僕はすごくホッとしたし嬉しかった。

これからは浅野の前では美由紀姉の話題を出さない方がいいのかも知れない。

 

「来月、期待していてね。」

別れ際、浅野は楽しそうに、そして悪戯っぽく笑って手を振った。

 

 

続く...

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2011年12月24日 (土)

恵子のクリスマスイヴ

『彼女の誕生日』
 volume 19 クリスマスイヴなのに・・・

 

一年生の時から好きだった彼に告白。

付き合うようになってから七ヶ月。

今年のクリスマスイヴは二人で・・・なんて

期待していたのに・・・。

それなら、私ん家に泊まりに来る?と京子が言った。

 

「誰も居ないね~。」

帰り道、京子がテニスコートを横目で見ながら言った。

「今日部活休みだもん。」

「イヴは駄目でも、クリスマスは?」

「明日もだって・・・。」

イヴに間に合う様に一生懸命編んだマフラーもいつ渡そうか・・・。

京子が肩をポンポンと叩く。

「今日は二人で朝まで騒ぐかぁ、ね!」

「でも明日も学校だよ。」

「せっかく寂しい恵子の為に盛り上げてやってるのに~。まぁ私もだけど・・・。」

「あっ、ごめん、ごめん。ありがとね。」

 

「あれっ?どこ行くの?」

通学路から外れ、横道に入って行く。

「へへっ、いい喫茶店見つけたんだ。」

通学路沿いに喫茶店が二軒、駄菓子屋が一軒ある。

駄菓子屋なんかはウチの男子の溜り場になっているし、

私も喫茶店に長野君と入ったこともある。

でも、こっちの方は滅多に歩く事もないから

喫茶店があるなんて気付かなかった。

木のドアを開けると、カランカランとウェルカムベルの音。

イブと言う事もあり、店内にはツリーがある。

カウンター席とテーブル席が五つで、木の温もりを感じる店内の造り。

「あっ、この曲聴いた事ある。」

店内に流れているジャズは、ジャズ好きな父さんの影響で

幼いころから子守唄のように耳にしていたし

絶妙なボリュームで心地よく感じる。

店の一番奥のテーブル席に座って二人ともホットを頼む。

 

「ねっ!いい感じの店でしょ。恵子なら気に入ると思ったけど。」

気に入ったよ。だから「長野君と来たかったなぁ。」なんて

思わず声にしてしまう。

「私で悪かったね。」

「いや、そういう意味じゃなくてね・・・。」

「じゃ、どう言う意味よ?」

「もう~。分かっているくせに~。」

「はいはい。ごちそうさま。」

でも何だろう?クリスマスイヴに用事って。

「違う子と会ってたりして。」

「・・・。」

「あっ、ごめん、ごめん。笑えないよね。」

そう、笑えない冗談だ。

私は結構ヤキモチ焼きなんだと、彼と付き合いだして気付いた。

付き合う様になって一緒にいればいるほど

傍に感じれば感じるほど、それは強くなった気がする。

「アイツはお人好しでおまけに情に流されやすいから、ちゃんと捕まえてないと何処かに行ってしまうぞ。」

修学旅行で水谷君に言われた言葉。

帰りに私から初めて手を繋いだのも、そのせいかも知れない。

でも、やっぱりきっかけは私のヤキモチからだ。

だって、あの時・・・。

 

「もしかしたらバイトなんかで忙しいのかも?イヴだし。」

そんなモヤモヤした気分の私に追い討ちをかける京子。

「えっ?バイトって?なんでイヴになの?」

「何でって、ほら。」

京子が私の後ろを指差す。

「え~、何で?」

振り向いた私の後ろに立っていたのは、

エプロンをして私達の頼んだホットを持った長野君だった。

「さて邪魔者は先に帰ろうかなっと。」

カバンを持って立ち上がった京子。

「じゃ、また後で報告してね。ちゃんと帰ってくるんだよ。」

私の横を抜ける時ボソっと耳打ちした言葉に赤面する私。

 

「驚いた?実は・・・。」

まだびっくり顔をしている私に説明を始める彼。

マスターが部活の先輩の知り合いで、アルバイトは夏休みに入ってから。

それから平日部活の無い日と土曜日にアルバイトしていたとの事。

「言ってくれればいいのに〜。」

返事の代わりに「ちょっと待って」と言って

カウンターの向こうへ入って行く。

「ほら、ミートスパゲッティ。好きだろ?」

戻ってきた彼がテーブルの上に載せる。

そしてもう一つ私の好きなオレンジジュースが。

「ねぇ、これってもしかして・・・?」

「そう。俺が作ったの。ミートソースも手作り。」

「美味しい。」

彼は今日はもう上がりだからとエプロンを外しながら

今日の為にバイトのことは内緒にしておいたと

言って照れ笑いした。

 

ホワイトクリスマスにはならなかったけど、外は風が冷たい。

でも繋いだ私の右手は暖かった。

そして彼がくれたシルバークロスネックレスと

マフラーを巻いてあげた時の彼の照れ臭そうな笑顔が

私の心も暖かくしてくれている。

時刻表を見ると、次のバスは5分後だった。

もうちょっと一緒にいたいなぁ。

「ねぇ、あの店気に入っちゃった。また行ってもいい?」

「いいよ。そう言えば美由紀姉も気に入ったって言ってたっけ。」

「えっ?近野先輩もあの店知っているの?」

「うん。この間来た時にさぁ、〜〜」

 

ああ、まただ。

楽しそうに話す彼を見る度に私の心は曇る。

私達の仲を取り持ってくれた人だし

従姉だっていうのも分かっている。

でも、彼の口からその名前が出ると胸が痛くなる。

ねぇ、何でそんなに楽しそうに話すの?

私の事を誰かに話す時にもそんな顔をしてくれてるの?

気付いたら私はマフラーを掴んで彼と唇を重ねていた。

そのまま何も言わずに、ちょうど来たバスに

逃げる様に乗り込んだ。

 

 

続く...

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2011年12月12日 (月)

もうすぐクリスマス

『彼女の誕生日』
 volume 18 手と手

 

つ、疲れた。

今日の日程は歩きが多すぎる。

修学旅行二泊三日の二日目、ホテルの部屋で荷物を降ろす。

和室で男子4・3で分かれ僕は三人の方。

「あ~。」

畳の上で大の字になったのも束の間

「おい、飯だから早く着替えなかんで。」

同じ部屋の伊藤に声をかけられ起き上がる。

 

“少しでも二人で一緒に歩けたらいいね。”

修学旅行出発日の朝、駅の集合場所で浅野に渡された手紙。

僕は修学旅行旅行委員で企画・旅行のしおり作成に携わっていた。

日程はもちろん、いろんな注意事項も知っている。

二年生を半分に分け、一日ずらして出発。

旅行中は班行動、男子クラスは男子だけで一班。

修学旅行旅行委員長で当然のごとく班長にされた僕が

単独行動が出来る訳もなく・・・。

一日目で二人で話せたのは夕食後から消灯時間までの

ほんのちょっとの間だった。

人数が多い女子は大浴場の入浴時間の順番が

決められているため時間を合わせるのが難しかったからだ。

 

夕食後、早めに大浴場に行く。

たしか昨日と時間配分が変わらないはずだから

また同じ時間ぐらいか・・・、と思い、一階で土産物を物色していたら

「長野君、ちょっといい?」

後ろから女子に声を掛けられた。

振り返ると同じクラスの鬼頭と小塚だった。

「え~と~、何?」

歯切れの悪い返事には訳がある。

二人は篠田の友達だ・・・。

「水谷君どこにいるか知らない?」

「いや、部屋が違うから分かんないけど、部屋にいないの?」

「さっき訪ねたけどいなかった。」

「あのさ、もしかして篠田・・・?」

「そうなの。出来たら探してくれない?」

またかよ、と思ったけど

二人は手を合わせて頼んでくるので

無下に断れなくなってしまった。

その場を離れて階段を昇りつつ考えた。

何でいつも僕に頼んでくるのだろう?

何で僕は探しに行くんだろう?

 

とりあえず僕の隣の水谷の部屋に行ってみたが、やっぱり居なかった。

同室の連中に聞いてみたが知らないと言う。

そりゃ、そうだ。知っていれば鬼頭と小塚がもう見つけている。

他のクラスの男子部屋に行ってみる。

一応ノックをしてみたが返事が無い。

「入るぞ~」

鍵が開いていたので、入って襖を開けて驚いた。

三組のカップルが、それぞれ壁にもたれ話をしていた。

「失礼!」

慌てて部屋を出た。

どうでも良いけど、これって気にならないのか?

場所選べよ、と思ったけど大きなお世話なんだろうなぁ。

 

それぞれいろんな所で出来ている数人の塊を

横目で見ながら探し歩いてどのくらい経っただろうか

そんな塊の中にようやく水谷を見つけた。

「やっと見つけた。」

「よっ!どうした?」

「どうしたも何も篠田が泣いてるって!」

息を切らし気味の僕に呑気に声を掛けた

水谷にカチンときた僕は声を荒げてしまった。

「いいじゃん。ほっとけよ、俺たちのことは。」

「いいじゃんって・・・。」

「どうせ頼まれてきたんだろうけど、関係ないんだからさ。」

「ああ、そうだよ。だからと言って・・・。」

僕の言葉を遮るように手のひらを僕に突き出した水谷は

「ほんと、お人好しだよなぁ。おまえ、そんなんじゃ今に泣きを見るぞ。」

と言って向こうに歩き出した。

「おい、水谷!どこに行くんだよ?!」

「部屋に帰るんだよ。それに俺たちの事より浅野は放っといていいのかぁ?もうすぐ消灯だぞ。」

言われて慌てて腕時計を見た。

ヤバい、もう10分もないじゃないか。v

走って行くと、人が疎らになった土産売場の入口に浅野が立っていた。

「遅〜い!」

「待たせてごめん!実は・・・。」

平謝りをして事情を説明する僕を許してくれたが

また明日ね、と部屋の前で手を振った浅野の顔は

笑ってはいたけど、すごく寂しげだった。

 

帰りの新幹線の中は寝ているのも多く、行きに比べて静かなものだった。

三日目、新幹線に乗る前までに少し浅野と二人で歩く事が出来た。

昨日と違って楽しそうに歩く浅野の横顔を見て僕は少しほっとした。

「~家に帰るまでが旅行です。気を付けて帰る様に。じゃ、解散。」

先生の挨拶が終わると、みんなそれぞれの方向へ帰っていく。

「じゃ、俺たちも帰るか。」

「うん。」

二人並んで歩き出したが

「あっ、そうだ。」

急に手を引っ張り別方向へ歩き出す。

「えっ、何?」

「何かお腹すいちゃった。何か食べて行かない?」

「ああ、いいけど。」

そのまま手を繋いで歩く。

何か照れ臭くて前を見たままだった。

そりゃそうだ。

浅野と手を繋いで歩くのは今日が初めてだったから・・・。

 

 

続く...

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2011年11月20日 (日)

浴衣の君は・・・

『彼女の誕生日』
 volume 17 あの頃のまま

 

二人並んで露店を前を歩く。

焼きトウモロコシの醤油の匂いにつられていく。

たこ焼きを美味しそうに頬張る。

しかし、よく食べるもんだ。

「だって美味しいんだもの。」

ペロッと舌を出す。

 

ニ週間前、いつも通り一緒に帰る時

「あのさ、再来週の土曜日祭りがあるんだけど、一緒に行かない?」

祭りの話を切り出した。

「再来週の土曜日?」

「うん、そう。」

嬉しそうな顔をして手帳を見ていたが

すぐ寂しそうな顔をした。

「ごめんね。その日は行けない。」

「えっ?だめ?」

「うん。家の用事で・・・、ごめんね。」

僕の問い掛けにすごく残念そうな顔をして答えた。

 

昼休みに体育館の連絡通路でぼぅっとしてたら

膝カックンをされた。

さては、また水谷かと思いきや美由紀姉だった。

「どうしたの?ぼぅっとして。」

僕は浅野とのやりとりを説明した。

「そっか。しょうがないよね。」

「まあね。そう言えば引越してからしばらく祭りに行ってないんじゃないの?」

「そうだなぁ、平日ばっかりだったし。」

「今年は土曜日だし、誰かさんと行ってくれば?」

「・・・。」

「美由紀姉?」

「えっ?ああ、そうか、そうだね。」

何だろ?この反応。ケンカでもしているのかな。

それでも、数日後

「祭りの日、カズん家に泊まりにいくから、叔母さんによろしく言っといて。」

と言ってきたから大丈夫なんだろう。

まぁ野暮なことは聞かないってことで。

 

二階の僕の部屋の窓から花火が見える。

今年も一人で花火見物かぁと思いながら

外を見ていると、玄関先で聞き慣れた声がした。

「ごめんくださ~い。」

下に降りて玄関の戸を開けると美由紀姉が立っていた。

「いらっしゃい。あれっ?浴衣じゃないんだ。」

「だって電車に乗っている間にシワになっちゃうもの。」

「でも母さんまだ帰ってないぜ。」

「大丈夫。自分一人で着られるから。」

 

「見て見て!新しい浴衣買ったんだ。」

浴衣に着替えた美由紀姉は袖を摘んでクルッと回ってみせた。

「へぇ~、似合うじゃん。」

「えへっ良かった。じゃ、行こうか。」

「えっ?」

「早く支度して!祭りに行くよ!」

「俺も一緒に?やだよ、お邪魔虫は。」

「違う、違う!カズと私、二人で行くの。」

「へっ?」

彼氏も浅野と一緒で都合が悪かったらしい。

 

「さぁ勝負するよ。」

「走ると危ないって!」

神社の本殿でお参りをして露店を一通り見た後

出口付近で金魚すくいを見つけて美由紀姉は走り出した。

「あっ!」

躓いて転びそうになった美由紀姉の手を取って支える。

「ほら、言わんこっちゃない。」

美由紀姉が足首を押さえてうずくまった。

「足どうかした?」

「ちょっと挫いたかも。」

 

「しょうがない。勝負は止めにして帰って湿布貼ろ。」

「うん。ごめん。」

肩を貸しながら歩く。

「通りに出たらおぶってやるから。」

「えっ~!恥ずかしいよ~。」

「だって家まで片足引きずって歩くつもり?20分はかかるぜ。」

「・・・、お願いします。」

美由紀姉の下駄を右手に持ちおんぶする。

「ねぇ、重くない?」

「重いですね~。」

「そういう時は重くないよって言うの!」

頭を小突いてくる。

 

「ねぇ、小さい時にもさ、こうやってカズにおぶってもらったことあったよね。」

「え~と、・・・ああ、あのときも美由紀姉転んで挫いていたっけ。」

「そうそう、でもあまりに危なっかしいんで、ちょうど通りかかった近所の人が

見かねて代わってくれたんだよね。」

「そりゃ、あの時は美由紀姉より小さかったしさ。」

「今じゃ私より背が高いし、力も強くなって・・・、男の子だよね~。」

「あのさぁ、何か馬鹿にしてない?」

「してないよ~、・・・。」

〈でも、ずっとあの頃のままでいられたらいいのに・・・。〉

「んっ?何か言った?」

返事の代わりにスッーと寝息が聞こえてきた。

「美由紀姉?もしかして寝ちゃった?」

はしゃいではいたけど疲れていたんだろうか・・・。

良かった。寝ちゃうくらいだから、足はそんなに酷くはないんだろう。

よく寝てるようだけど、花火が上がる前には起こさなくっちゃな。

じゃないと何言われるかわかんないし。

 

 

続く...

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2011年11月 6日 (日)

携帯もなければインターネットもない時代

『彼女の誕生日』
 volume 16 雨の物語

 

「じゃ、待ってるね。」

「んっ。」

付き合いだしてから、浅野は僕の部活(軟式テニス)が終わるのを

図書室で待っている。

部活が終わったら、図書室に迎えに行って

一緒に帰るのが日課になった。

と、言っても部活のある月・水・金の週3日で毎日じゃない。

それ以外の日は、浅野は友達と帰っていた。

友達も大事にしたいからと浅野は言った。

それなら逆にした方が待たなくていいんじゃないのと

聞いたことがあったけど、本を読んだり

僕がコートにいる姿を眺めたりして待つのが

好きだからと照れくさそうに話してくれた。

そんなことを聞くまで気付かなかったが

図書室からコートが見えるらしい。

「じゃ下手な事出来ないじゃん。」

「下手な事?それってラケットを折った事?」

悪戯っ子みたいな眼をして、クスクス笑いながら聞いてくる。

「えっ?見てたの?」

「うん。スマッシュした時でしょ。」

「まぁ、それはですね・・・、汗で手が滑ってですね・・・」

「何で敬語になってんの?」

大笑いされた。

 

何気ない帰りの会話のやり取りも、始まりは浅野から

渡された小さな手紙だった。

“今日、部活終わるまで図書室で待っててもいい?”

それは僕が渡した四つに畳んだだけのものじゃなく

一枚の紙を折って封がしてあるような感じのものだった。

「へぇ~、こんな折り方もあるんだ。」

それからは僕も浅野の真似をして手紙を折って渡した。

お互い電話で長話が出来ない家庭環境ゆえ

控えめで小さかった手紙も、書く量も増え

だんだん大きくなっていった。

若干人見知り、でも慣れれば陽気で少しドジなところも。

一ヶ月前までは知らなかった浅野の事。

それに伴い少しづつ近くに感じられていく。

付き合うってこういう事なんだなぁと思った。

でも浅野はどう思っているんだろう。

「ナーイショ。」

笑いながら躱された。

 

「やべっ、降って来た。」

六月始めの部活の日。

終わり間近に雨が降って来た。

天気予報で降るって言ってたので、傘の心配はないが

道具が濡れるので慌てて片付ける。

濡れた髪を拭き着替えて図書室に向かう。

「おまたせ。帰ろうか。」

「うん。雨、降って来たね。」

そう言えば、一緒に帰る日じゃ初めての雨か。

 

階段を下りて下駄箱に向かう途中で

浅野の手元に傘がないのに気付いた。

「あれっ?傘は?」

なんて、一ヶ月前の僕なら聞いているだろう。

それでもって美由紀姉に“鈍感”って言われるのだ。

でも、気付いたとき咄嗟に言葉にしなかったのは

少しは僕も成長している(?)んだろう。

照れ臭さを隠しつつ傘を開きさしかけると

はにかんだ笑顔で傘に入って来た。

 

 

続く...

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2011年10月30日 (日)

第ニ章へ

『彼女の誕生日』
 volume 15 初めて

 

そこにいたのは

「水谷!」

「よっ。おはよう。」

「よっ、じゃねーよ。なんだよ?」

「なんだよ、は御挨拶だな。こんなとこで何してんだよ?」

「別に、何だっていいじゃんかよ。」

「あっ、そう。それは良いけど今日日直じゃなかったけ?」

 

げっ。そうだった。日誌取りに行かないと。

「サンキュー。一応礼は言っとく。」

「あっ、一応ね・・・。」

こればっかりはしょうがない。

浅野の事は後回しにして職員室に行く。

 

「失礼しま~す。」

挨拶をして職員室を出ようとして

扉を引くと女生徒に出くわした。

「浅野?」

浅野がちょうど通りかかったのだった。

「お、おはよう。」

よかった、いいタイミングで会えた。

あたりに人はいないし。

「おはよう。あのさ、これ・・・。」

小さく畳んだメモを渡す。

「じゃあ。」

「う、うん。」

浅野は職員室に入っていった。

たまには良い事(?)をしてくれる。

水谷に心の中で感謝した。

 

「あれっ?何でいるの?」

しまった、びっくりして間抜けた声になってしまった。

手渡したメモの通り、部活のあとに

待ってもらっていた教室に行った。

扉を開けると、浅野の他にもう一人いた。

遠藤京子だ。

「じゃぁね、長野君。邪魔者は消えますから。」

遠藤はそう言いながら出て行った。

 

浅野とふたりきりになると改めて緊張する。

机を一つはさんで向き合う。

「あのさ・・・」

「ごめんなさい、先に話していい?」

僕の言葉を遮って浅野が話しだした。

「わ、私、あの時気持ちしか言ってなくて肝心な事言ってなかったの・・・。」

「肝心な事?」

「うん。改めて言うね。・・・、好きです。付き合ってください。」

ぺこっと頭を下げる。

「ごめん。」

浅野の肩がぴくっと震えた。

「俺、浅野の事何も知らなくて。一年の時から見ててくれてたんだ。

・・・でも、それでも知らない事がいっぱいあると思う。

それに何より俺が浅野の事知って行きたい。」

「えっ?」

浅野が顔を上げて僕を見る。

「この間も美由紀姉にも言われたけど鈍感だし、

付き合っていくうちに困らせたり、泣かせたりするかも

知れないけど、それでも良いなら・・・。」

「・・・それでも良いなら?」

「いいよ、浅野。付き合っても。こちらこそよろしくお願いします。」

顔を上げると浅野が両手で顔を覆って僕を見ていた。

両眼からは涙が・・・。

小さい頃から女の子の涙は幾度も見て来た。

だけど、こんなにもいとおしく思える涙が

あることを今日初めて知った。

 

 

続く...

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